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コラム 学識者・企業人はこう考える!

小型バイオマスプラントの事業化・普及【モデルケースA】

焼津市のはごろもフーズ鰹ト津プラントは、まぐろ・かつおを原料としたツナ缶詰を製造しています。この工場では、ツナ缶の原料となる魚肉以外の内蔵やアラなどもエキスや飼肥料として先進的に有効活用しています。
しかし製造工程で発生する魚血水は有効活用が難しく、環境負荷の高い廃液として排水処理していました。今回の実証化試験では、魚血水のエネルギーとしての有効活用と、排水処理工程の負荷低減による維持管理経費の削減を目的として、メタン発酵処理の導入をモデルケースとして事例検討を行いました。





冷凍まぐろを加工する場合、解凍工程で解凍水、解体工程で魚血水及び内臓液が発生します。解凍水は大量に発生しますが有機物濃度が薄すぎるため、メタン発酵処理よりも通常の排水処理が適していると判定しました。内蔵液はメタン発酵処理に要する時間が10日間以上と長く、発生量も少量のためメタン発酵処理の対象外と判定しました。
一方、血水廃水は有機物濃度がメタン発酵処理に適し、前処理を行わなくても効率よくメタン発酵が可能であることが確認されたため、前処理工程を省略できることがわかりました。
処理に要する時間は8日間程度と判明したため、「日量3トンの魚血水廃水を10日(内蔵液の混入など安全面を考慮)で処理するプラント」をモデルケースとしてパイロットプラントによる実証化試験の実施方針を決定しました。


モデルケースの前提条件として、実証化試験では魚血水廃水日量60Lを処理して得られた試験データを基に、日量3トンの廃棄物処理にスケールアップした場合の試験データを推計して評価しました。





実証化試験の結果です。グラフでわかるとおり、青色のガス発酵効率と原料中の有機物分解効率から、原料の有機物の9割がバイオガスに変換されていることがわかります。また、バイオガスの約7割がエネルギー利用可能なメタンであることもわかります。
なお、血水のメタン発酵では、下のグラフの赤い×印で示したとおり、7,000ppm、0.7%くらいの高濃度の硫化水素が発生するためバイオガスを利用する時には、脱硫剤で取り除く必要があります。
メタン発酵処理を採用せず硫黄分の多い排水を排水処理場で処理する場合、硫化水素が発生し作業環境を悪化させる事例があります。メタン発酵処理を採用すれば、硫黄分がバイオガスに移行するため効率的に硫化水素を取り除くことができ、排水処理場の運転管理が改善する効果も期待できます。


魚血水廃水が日量3トン排出するツナ缶詰工場でバイオガスの有効利用方法を、ガスエンジン、蒸気ボイラー、温水ボイラーの3パターンで事例検討して事業性を評価しました。事業性評価結果が最も有利と判定された蒸気ボイラー利用のケースでは、136kWh/日の熱エネルギーが回収可能で、プラント維持管理で熱エネルギーを利用した場合でも、25 kWh/日の熱エネルギーが有効活用できます。
また、プラントの設備投資として約3,200万円が必要となりますが、減価償却期間を15年と設定した場合、排水処理費用の削減と消化液の有効利用による収益により年間48万円程度の利益が生まれます。国や県の補助制度をうまく活用することにより初期投資の回収には12年程度かかることがわかりました。


今回の事例では、現状、魚血水廃液を処理単価の安い排水処理で対応していたため、コスト評価の観点では有用性は認められませんでした。しかし、メタン発酵プラント導入により、既存の排水処理施設への負担が軽減できるため、排水処理設備の耐用年数向上の効果が期待できます。
排水処理施設の老朽化に伴う設備更新を想定した場合、メタン発酵施設と排水処理設備の組み合わせにより、既存施設より小規模で新エネルギー回収可能なシステム提案が可能です。


最後に、実証化試験の研究成果をまとめました。

魚血水廃水は、濃度調整や補助薬剤等の成分調整、特別な前処理は不要で安定的にバイオガス化(エネルギー利用)できることがわかりました。実証化試験で得られた結果を日量3トン規模の工場に適用した場合、バイオガスエンジンによる発電・熱回収より、バイオガスボイラーによる熱回収のほうがエネルギー収支的に有利で、エネルギーの自産自消が実現できることがわかりました。
また、資金面の評価では、魚血水廃水はもともと処理単価の安い排水処理で対応しているため大きな収益は得られませんが、既存の排水処理施設への負担が軽減可能で、排水処理設備の耐用年数向上の効果が期待できます。
排水処理施設の老朽化に伴う設備更新を想定した場合、メタン発酵施設と排水処理設備の組み合わせにより、既存施設より小規模で新エネルギー回収可能なシステム提案が可能です。
さらに、消化液は安全性に問題なく液肥としての利用が期待できることから、資金面のメリットに加え、農産物・水産物生産による資源の地産地消も期待できることがわかりました。


平成30年9月

静岡県小型メタン発酵プラント事業化推進協議会

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