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コラム 学識者・企業人はこう考える!

- 「発電」だけじゃない、木質バイオマスエネルギー - (株式会社森のエネルギー研究所 実践コンサルティング部 チーム長 虎澤裕大 氏 )

 最近、木質バイオマスといえば「木質バイオマス発電」のニュースを目にする機会が多いと思います。しかし、木質バイオマスの利用方法は「発電」だけではありません。今回は木質バイオマス「発電」の日本における現状と課題についてお話しするとともに、発電だけではない木質バイオマスの活用方法についてもお伝えしたいと思います。

 

 みなさんご存知と思いますが、再生可能エネルギー電力の固定価格買取制度(FIT)が施行されたことにより、木質バイオマス発電も多くの事業者が参入し、現在ではおおよそ各県に1〜3か所の計画が林立しています。

 

 とくに今年2015年以降は多くの発電所が稼働し始めます。木質バイオマスに注目が集まり、様々な事業者が参入することになったことはとても良いことです。

 

 ところがここで大きな問題となっているのが「燃料調達」の不安です。木質バイオマスは太陽光・風力・水力・地熱など他の再生可能エネルギーと違い、常に燃料となる木材を自ら調達しなければなりません。現在計画されている発電所はほとんどが発電出力5,000kW以上と大型のもので、これには1か所で年間約10万立米(5,000kW級の場合)の木材を燃料にしなければなりません。

 

 10万立米といってもピンとこないかもしれませんが、北海道・東北・九州の一部の林業県を除いて多くの都道府県の木材生産量は年間20〜30万立米程度、静岡県は年間27万立米(H26年)ですから、ひとつの県の生産量の半分から1/3にあたるような非常に大きな量であると言えます。もちろん林業生産者側にとって新しい需要が生まれることは生産量を伸ばす好機ではあります。

http://www.mori-energy.jp/img/hatsuden_map2.png

叶Xのエネルギー研究所HPより

 

 しかしながら、これまで就業者数が減少し高齢化も進んでいる日本の林業の現状では、こういった急激な増産要求にすぐに対応するのは容易ではなく、実際計画通りに木材が集まっていないところや今後の収集に疑問符のつくところも出始めています。

 

 国としてもこの大型の発電所に偏重した状況を見直すべく、今年度から「2,000kW未満」という中小規模発電の区分を新たに設け、その電力買取価格を優遇することを始めました。しかしこの領域では発電を事業として成り立たせるために超えなければならないハードルが未だ多く、今後の技術的進歩や事業環境の整備を促すための価格政策という面が強いと考えます。

 

 木質バイオマス発電については大きな期待が掛かる一方、木材生産力を見誤った無謀な計画は避けなければなりませんし、中小規模発電はまだまだハードルが沢山あります。では木質バイオマスは今後利用拡大が難しいのかというと、そうではなく、「発電」にこだわらなければ良いのです。

発電ではない木質バイオマスのエネルギー利用方法は「熱」です。「熱」というのは具体的には暖房、給湯などの身近な用途から工場等での加熱用途など、あまり普段意識しませんがエネルギーの利用形態として大きな割合を占めています。

 

 そもそも木質バイオマスのエネルギー利用方法として一番効率がよいのは「熱」のかたちであり、木材そのものが持つエネルギーの8割程度を使うことができます。「電気」はこの「熱」を蒸気タービンで変換することで作り出すことができますが、どうしても変換できる効率に限界があり、「電気」だけでは木材の持つエネルギーの2〜3割しか使うことができません。これは非常にもったいないことです。

 

「熱」の利用先としては工場、温浴施設、病院や福祉施設など地域内の身近なところにあります。ストーブや小型の給湯ボイラーなら家庭で利用することもできます。これらは数百〜数千立米の木材調達量で済みますので、数万立米規模が必要になる発電事業と比べれば、ひとつの町や村、地域で無理なく調達することができます。

 また現状化石燃料を燃やしているところを地域で生産される木質バイオマス燃料に切り替えれば、地域外(さらには国外)に流出していた化石燃料費を地域の資源を購入する費用に回すことができ、地域の経済循環、雇用創出などの効果が期待されます。

 

 「熱」の場合、1か所では大型発電所ほどの大量のエネルギーを生み出すことにはなりませんが、地域の小さな循環が数多く生まれることに意味があると思いますし、エネルギーの観点にとどまらず地域のつながりや良さの再発見にもつながると考えています。

 

 たまたま先月、林業とバイオマス利用の先進国であるオーストリアに研修に行く機会がありました。先方の担当官は、「日本人は発電のことばっかり頭にある。熱として使うのが本来の姿だ」と言っていました。もちろん電気は便利で使いやすいエネルギーであり、発電のより良いやり方の追求もしていくべきとは思いますが、基本となる熱利用をもっと大事にしていきたいと考えています。

 

 そして木質バイオマスが単なるエネルギーの供給方法でなく、地域が自分たちで考え自分たちの地域を良くしていくためのひとつの手段となるような、そんな仕組みづくりのお手伝いをしたいと思っています。

平成27年9月

(執筆は平成27年8月)

 

株式会社森のエネルギー研究所
実践コンサルティング部 チーム長 虎澤裕大

 

 

 

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