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コラム 学識者・企業人はこう考える!

- GHGの算定・報告基準の国際統一化を急げ - 静岡産業大学 教授 吉岡 庸光 氏

先頃、地球温暖化問題に関する英国の代表的な情報コンサルタントのポイントカーボン社は、英国のフラッグキャリアーであるブリティッシュ航空(BA)が欧州排出権取引制度(EU-ETS)下における温室効果ガス(GHG)排出量キャップを大幅に超過するため、大規模な排出権購入が必要となる、と報じた。

 

このことは、低炭素経済体制移行の時代においては、エネルギー多消費型産業セクターに限らず、いずれのセクターにも起こり得ることであり、企業経営における排出量管理、つまり、カーボン・リスクマネジメントの難しさを表面化させる事例となった。

 

一方、このことを、外部の機関投資家やステークホルダーから見れば、投資先企業が排出量購入のために支払う費用は、当該企業の財務内容や収益性に大きなマイナス要因として作用し、結果として、企業価値を大きく左右する現実的な投資リスクである。

 

つまり、投資家や環境NGOなどのステークホルダーは、企業が抱えるこのような潜在的リスク(偶発債務)を正確に評価予想する必要がある。

 

従って、今日の企業の経営者は、内部の経営管理の面からも、また、外部のステークホルダーへの透明性を確保するために、自社の温室効果ガスのインベントリー情報やその変動要因を正確に把握・算定し、公開することが望ましい。実際にその努力は、最近の日米欧の企業のCSRレポート等に現れて来ている。

 

しかし、現状では、企業の排出量の算定手法に関しては、解決されるべき一つの課題が論じられている。それは、我国が企業に温室効果ガスの算定と報告を義務付けた、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(温対法)をはじめ、海外には、グリーンハウスガス・プロトコル(GHG Protocol)、カーボン・ディスクロージャー(CDP)、ISO14064、グローバル・リポーティング・イニシアティヴ(GRI)等、多くの算定・報告基準が存在する。

 

大筋では徐々に同一化に向かってはいるが、現状では、算定の対象領域、組織限界、算定単位などの細部においては、個々の主張に温度差が見られる。特に、事業活動におけるバリューチェーン(間接的排出源)から発生する温室効果ガスの算定については、その理論的および技術的な困難さも手伝って、多くの議論を引き起こしている。

 

実際に、我が国の国際的企業の中でも、この排出源にまで迫って算定しているのはほんの数社であり、また、前出の「温対法」においては、“参考情報”という扱いに止まっている。これに加えて、米国のSECや欧州諸国の会計基準関係当局など財務諸表への記述情報面からの意見も散見される。

 

このように、排出量算定に関する議論の分散は、温暖化問題防止に重要な役割を担う企業とそれを取り巻く諸々のステークホルダーとの間での透明性と信頼関係を阻害する。特に、国際金融市場において、企業の温暖化対策を資金面から支えるSRIなどのニーズに応えるために、企業が抱えるカーボン・リスクの正確な評価を可能にする算定基準の設定と、その国際的な統一を急ぐべきである。


平成23年11月

 

静岡産業大学 教授 吉岡 庸光

 

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