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コラム 学識者・企業人はこう考える!

- 竜水護森木札に願いをこめて - 寸又峡まちづくり会議実行委員会相談役 溝口 久 氏

 

NPO法人魅惑的倶楽部(エキゾチッククラブ)代表の鈴木さんから、メールが入った。「今年度、国土交通省の「新たな公」によるコミュニティ創生支援モデル事業に採択され、みさくぼ大好き応援団の仕組みづくり事業に取り組んでいます。

 

 これは、天竜川上下流域の市民や都市住民・NPOが主体となって、浜松市天竜区水窪町(みさくぼちょう)をモデルに、交流を通じ地域を知り、“森林環境”の保全・管理ついて、共に支えあう「仕組みづくり」を行うというものです。

 今回、天竜川・水窪の自然や環境を学ぶ体験交流のモニターツアーを募集しています。この「モニター」となって意見を聞かせてくれというのだ。


  この仕組みの材料が「竜水護森木札」である。間伐材を輪切りにして、これを木札として願い事を書いてもらい街なかに、神社でよく目にする絵馬を奉納してあるスタイルで掲示する。

 その後、水窪町にある山住神社に持って行き、実際に奉納するというものだ。これには、巧みな協働の仕組みがある。同NPO法人と、水窪の町おこしグループ「ここほれワンワン塾」とNPO法人地域づくりサポートネットで、みさくぼ大好き応援団推進協議会を組織し、実施に当たっている。ここに市民が参加する。

 

 まずは木札のもとになる木は水窪の山にある桧の間伐材で、それを直径10〜15cmの丸太を厚さ1cm程に輪切りにする。ここまではワンワン塾のメンバーの仕事だ。これを木札の成りに整えなくてはならない。紙やすりを使い切り口のバリを取り表面を磨く。1500枚程度作る。

 紙やすりだけでは手に負えないから木工機械も用意されている。このツアーの一番の目的は、この木札の制作にある。1泊2日の2日目に、4時間の作業が待っていた。どうりで二日目のスジュールの記載が少ないはずだ。この1500枚の木札を持ち帰り、焼印を打ち、吊り下げるために穴を開け、紐を通す。この作業は授産所の仕事になる。完成した木札を売らなくてはならない。買われた木札には個人の想いが書かれ、一時街なかに飾られる。

 

 

 

 

この作業は魅惑的倶楽部の仕事だ。売価300円、これだけの手間がかかって300円は安い、安過ぎる。この1枚当り300円のお金の内、100円はワンワン塾へ、消耗品や山の維持にかかる費用の一部に当てられる。100円は授産所に制作費として渡され、残りの100円はNPOへではなく、浜松市森林環境基金へといく仕組みになっている。NPOは全くの持ち出しになるから、ここに補助金を求めることにしている。補助の先は今年は国交省であり、昨年は浜松市だった。

 

 水窪も障害者もNPOも経済的に満たされる規模のものではないけど、都市市民の環境啓発、森林への関心アップ、天竜川の上流域と下流域の交流と理解といった知的満足度は高いと思う。

 

 この欲張った目的を持ったモニターツアーに職場の仲間と3人で参加した、他に養護学校の生徒と親、一般市民ら、協議会スタッフ合わせ40余名のモニターツアー参加となった。

まずは天竜川の河口に行き、侵食が進む中田島砂丘を目にした。 天竜川上流域は中央構造線が走り、地質が弱く急峻のため土砂の生産量が多い。そのため砂利の採取を可能にし、日本三大砂丘と呼ばれる中田島砂丘、そして長く続く遠州浜をつくった。

 ところが、今となっては15のダムで土砂の流出がせき止められ、波でさらわれる砂の量のほうが、運んでくる砂の量より多くなってしまったというのが砂丘をやせさせている主たる理由だ。ただ、ダムは電力に、取水に、洪水防止に利用されているから、早々破壊できるものではない。そこで近頃、ダム上流から下流に土砂を流す海底トンネルなるものを作ることが計画されている。

 

 自然に手をつけると、その変化に応じたバランスをとる。何かを取れば何かが失われる。当てる光が強ければ影は濃くなる。自然界において三方良しはなかなかないようだ。

その後は、一路水窪に向かい、山住神社、標高1000mのところを走るスーパー林道から水窪の深まり行く秋を堪能した。

 

 最後に水窪ここほれワンワン塾が市から利活用を任されている山林、名付けて「ワンワンの森」10haを見学、企業もCSRとして間伐作業に入っているとのこと、ここで代表の板橋さんが杉を伐採すると言う。その木の幹周80cm程もある。間伐で切るような径の木ではない。

 チェーンソウで受け口を作ると反対方向から水平に鋸刃を入れ始めた、一分も立たずに高さ30mもある杉の木が地を揺らす音を立てて横たわった。皆から歓声が上がった。林業家に違いないと思っていたら、後でいただいた名刺には左官と書かれていた。本人曰く「ワンワンの仕事が年間60日ほどなっちまって、仕事はもう趣味だよ」。

 

 夜は交流会が用意されていた。自己紹介が廻ってきたので「母が師範学校を出て最初の赴任先が水窪小学校でした。今85歳だから、もう60年以上前の話だけど、教え子の方や同僚の方でもし知っている方がいたら知らせて欲しい。」と言ったら、翌朝、泊まった旅館に桜井と名乗るかつての同僚の方から電話があった。「懐かしいやー 会ってみたいねえ」と言うものだから、「11月9日の水窪の街道祭に母を連れてきますよ」と答えた。これで2週間後にまた水窪に行くことになった。

 

 面白くなってきた。いい交流のきっかけをつくってくれてありがとう。お楽しみはこれからだ。

平成20年11月

寸又峡まちづくり会議実行委員相談役

浜名湖えんため顧問

溝口 久

 

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