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ビジネス事例紹介 環境ビジネス成功の秘訣

馬鈴薯でん粉工場排水から資源回収 でん粉工場周辺の一連の廃棄資源利活用システムを開発

小清水町農業協同組合
沼津工業高等専門学校

北海道小清水町農業協同組合(以下、農協)では、馬鈴薯のでん粉製造工程からの廃棄物等を有効利用する一連の技術を開発しました。 そこには遠く離れた沼津工業高等専門学校(以下、高専)との出会いを機に、農業現場に潜む「廃棄物」に対する意識の変化があったとされ、現在も2者は交流を続けているといいます。今回は沼津工業高等専門学校、北海道小清水町農業協同組合にお話を伺いました。



でんぷん製造と副産物処理

馬鈴薯でん粉は,馬鈴薯をすりつぶし、大量の水を使用してでん粉質を沈殿させ、この沈殿物を乾燥させ製造しますが、副産物として、馬鈴薯の繊維質(以下、芋の果肉粕であり ”でん粉粕”という)と高濃度のタンパク質を含む水溶液(デカンター排水)が排出されます。

デカンター排水中には多量の肥料成分が含まれており、これまでは圃場に散布することで圃場還元を行なっていましたが、散布後の悪臭(馬鈴薯由来タンパク質の腐敗臭)やソウカ病(馬鈴薯の土壌伝染病害)の原因となり、大きな問題となっておりました。

対策として、圃場散布をやめ、代わりに排水処理を選択する組合もありましたが、農業生産で得られた収益は処理設備の建設とその維持管理に消え、生産農家に届くべき収益は減る一方でした。

悪臭原因物質であるタンパク質回収方法として、タンパク質の水蒸気熱変性による比較的効率的な除去回収を実践する工場もありますが、エネルギー依存型の工場として費用増に喘いでいます。

その他、等電点の理論により、タンパク質の沈殿回収も考えられますが、北海道のでん粉工場では、一般的に等電点方式でのタンパク回収は採用されていません。 何故なら、でん粉工場が想定する通常の遠心分離では、沈殿物の回収率が2〜3割程度のため、これを解決するにはとてつもない台数の高速遠心分離器と電気代を要するからです。逆に、遠心力不足でタンパク質を取りこぼせば、巨額な中和剤(苛性ソーダ)を要する排水処理工程が待受けており、頭の痛い問題でした。

液肥利用のための等電点処理

以上から、北海道のでん粉工場にとって、「排水理論」からアプローチする等電点式のタンパク質回収法を採用する事は非常識と言わざるを得ませんでした。
農協では、排水処理にかかる相談の相手先(共同研究先)である高専物質工学科 蓮実研究室(当時)の紹介もあり、「等電点処理」にトライするもやはり回収率は改善できず、一端この方法を断念しました。
しかし、佐藤正昭代表理事組合長の指揮の元、開発プロジェクトを担当した真柳正嗣農畜産部長(当時)が独自の総合システムを考案し、農協を権利者とする特許2件を取得しました。

ただし、このシステムで専用型遠心分離機を使用しても、タンパク回収率はたった2〜3割強です。組合は、等電点をタンパク質の回収率のみで評価することはやめ、圃場への液肥還元の為の重要要素である、低pHによる腐敗停止(臭気低減)やソウカ病菌の死滅へと、価値基準の置換えに発想転換しました。これにより、悪臭散布やソウカ病伝搬を回避した肥料分の圃場散布が可能となりました。

なお、排水にはタンパク質由来の窒素の他に、カリも含有しており、小清水町の場合10a当たり約1万円の化成肥料を要した馬鈴薯生産に対し、10a換算で約3,500円の圃場還元となっています。

副産物同士の利用で問題を解決

酸性にて腐敗が停止していた排水により、圃場還元の際に使用するスラリー散布車のタンク内部が錆びるという問題が生じてしまいました。
そこで製糖工場副産物であるライムケーキ(てん菜から砂糖製造する過程で生成,炭酸カルシウムが主成分)を利用して中和したところ、添加した硫酸との相性により硫酸カルシウムが液肥中に反応生成することがわかりました。

硫酸カルシウムは、農家にとって大変貴重な、土壌pHを上げない中性カルシウム補給剤です。また再利用に難儀していたライムケーキの利用は、中和剤として価格面でもメリットが大きく、(苛性ソーダ約1億円に対してライムケーキ約50万円)負担を大きく軽減できました。

以上の様に、等電点後の排水の圃場還元が担保されたことで、等電点によるタンパク質回収は、不完全回収であることをいとわない環境が整いました。
回収可能な量だけ餌用タンパク質(飼料用適正検査済み)を回収し、澱粉粕とフスマ(小麦の表皮を削って出来た副産物)と混合し、サイレージとなります。

回収後のタンパク質にはフスマ(水分10%以下)を混合することで、乳酸発酵にとってベストな水分とされる70%程度に調整されますので、乾燥熱エネルギーを使用しません。 こうして、馬鈴薯タンパク質が補充されることに加え、フスマに含まれる糖質が即効的な乳酸菌増殖も叶えるため、これまでは評価の劣る澱粉粕飼料でしたが、良質発酵で栄養バランスにも配慮したサイレージとして、今後の需要が期待されます。

まとめ概念図

でん粉工場

※でん粉工場とは、馬鈴薯を3つに分解する工場です。@AB
※Bはタンパク質(資源・腐敗物質)を含有した資源です。
※Bを酸処理すると、腐敗停止され、沈殿物としてDが回収できます。AとDとフスマの3種混合でFができます。タンパク質入りの良質乳酸発酵サイレージです。
※また、Bの処理で、滅菌と腐敗停止された、液肥Eが製造されます。これを圃場散布の際に、ライムケーキで中和し有機中性カルシウム入りの液肥として圃場還元します。

まとめ

平成17年当時、農協単独にて行っていた酸処理実験資料をもとに、等電点原理が抱える欠点を克服するだけではなく、地域資源全体の連結合理システムを完成させました。

農協と高専は、現在も澱粉工場周辺における工学的テーマの発掘依頼等を通じ、「捨てる物を無くす」ことの共有意識の元、共同研究を継続しています。
最後に、独創的なプラントの施工から稼働までの間には、現場ならではの予想を超えるハプニングが数々発生し、特に施行や運転には職人技が数多く求められます。
農協では、一般排水処理の既存技術の応用のほか、稼働時には当澱粉工場の職員(機械、電気、制御、検査)等の協力を得て、新方式のプラント運行を実現しています。

 

 

 

 

お問合せ先
北海道小清水町農業協同組合
(http://www.okhotsk.or.jp/ja-koshimizu/)
北海道斜里郡小清水町字小清水379番地 〒099−3697
(代)Tel 0152-62-2111 Fax0152-62-3411
部署→JAこしみずでん粉工場


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