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ビジネス事例紹介 環境ビジネス成功の秘訣

馬鈴薯でん粉工場廃水からのたんぱく質回収と有効利用(独立行政法人国立高等専門学校機構 沼津工業高等専門学校)

独立行政法人国立高等専門学校機構 沼津工業高等専門学校

設置年月日:昭和37年3月29日
学生現員:1,083名(平成26年10月1日現在)

馬鈴薯でん粉工場からの廃水による悪臭に長年悩んでいた北海道小清水町農協を救ったのは、沼津工業高等専門学校(以下「沼津高専」)物質工学科の蓮實文彦教授と竹口昌之准教授及び学生のグループが開発した廃水処理システムでした。今日は沼津高専でお二人にお話を伺いました。


学校概要
高等専門学校(高専)は、中学校卒業後の早い段階から、5年制の実験・実習・実技を重視した実践的技術教育を通して、卒業後は産業界で活躍できる工学知識・技術を身に付けた実践的技術者を育てる高等教育機関です。(大学は高等教育機関、高校は中等教育機関)全国に57校(うち、国立高専は51校55キャンパス)あり、沼津高専は昭和37年に開学した第一期校の一つで、平成24年に創立50周年を迎えました。

でん粉工場廃水問題
北海道では農協単位ででん粉工場を保有しているほど、たくさんの農家で馬鈴薯が栽培されています。でん粉工場には廃水処理施設が不可欠で、多くの農協が昔ながらのメタン発酵による処理を行っています。小清水町農協の馬鈴薯でん粉工場も同様で、廃水はBOD(生物化学的酸素要求量)40,000ppm、廃水量は工場が稼働する2ヶ月だけで63,000t、廃水の成分は95%が水分です。5%の固形成分のうち、55%がたんぱく質、他は灰分や炭水化物等です。廃水量37t/hに対して水処理能力は10t/hのため、未処理廃水は一旦貯水し、順次処理していました。この貯水から悪臭が発生し、硫化水素系の悪臭だけでも濃度10,000ppmで苦情も絶えず、悪臭は小清水町農協最大の課題でもありました。このため、小清水町農協から相談があったことをきっかけに、当校で取り組むこととなりました。

新しくも古い技術「等電点沈殿」
たんぱく質の回収や除去のために、実験室レベルでは一般的によく使われる方法だった「等電点沈殿」を、沼津高専のグループが応用し、水処理に採用しました。たんぱく質のような両性電解質は、一般にプラスとマイナスの電荷が等しい時(電荷0(ゼロ))に溶解度が最も小さくなる性質を利用したもので、等電点はpH調整によって簡単につくり出すことが可能で、小清水町農協では硫酸を使用しています。その後、遠心分離によって沈殿物質とし、効率的な回収を可能にしました。

処理後の廃水は、これも北海道特有の廃棄物であるライムケーキ(※)を加えた後、圃場に散布され、肥料として有効に利用されています。
馬鈴薯でん粉工場廃水は、窒素やリン等の肥料成分が豊富なため、以前から圃場に希釈廃水を散布していましたが、悪臭がひどく、農家は半ば義務として散布していた面もあります。
ところが等電点沈殿により処理した廃水は臭いがありません。さらに、ジャガイモの商品価値を下げる病気「そうか病」の原因菌(放線菌)を死滅させる働きがあることも沼津高専の研究によりわかりました。
※ライムケーキ:てんさい糖精製時に、主に不要な有機物や色素を取り除くため、炭酸カルシウムを加え、不用物を吸着させる。これを脱水したものをライムケーキといい、発生量の半分以上が埋立処分されている(出典:北海道庁webサイト)

馬鈴薯でん粉工場廃水処理プラント

タンパク質回収後廃液を散布するローリー車

回収タンパク質を飼料に加えているところ

 

酪農家を救う一手になるか
他の水処理方式と一線を画するのが、回収したでん粉を有効活用できる点です。水と分離したたんぱく質は廃棄物として処理するのでなく、pH調整後、小麦の製粉時に出るふすまを混ぜて発酵させ、飼料として有効利用が可能です。小清水町農協の事例では、3,000t/年の飼料を製造しています。
経済効果としては、搾乳牛60頭の経営農家の場合、輸入配合飼料では、年間必要経費(カッコ内は年間必要飼料量)4kg×65円/kg×60頭×365日=5,694千円(15.6t)に対し、馬鈴薯由来たんぱく質混合飼料では、10kg×6.5円/kg×60頭×365日=1,423千円(39.0t)と、飼料コストが最大で75%削減可能と判明しました。ミルクの味への影響もなく、飼料の高騰で大変厳しい状況にある酪農家の皆さんにも喜んでいただいています。

投資回収可能な水処理施設
等電点沈殿処理方式は、従来の廃水処理に比べて非常に安価で、施設がコンパクトです。導入にかかった費用は、処理能力:29t/hで、イニシャルコストが約6.7億円、ランニングコストが硫酸の購入費等ですが、これはわずかです。現実には、飼料利用の対価として市場価値で計算したところ1億円/年のプラスになっており、今後の飼料価格の動向によっては数年で設備投資を回収し、利益が生まれる可能性もあります。

今後の目標等
実験室レベルでは、等電点沈澱により、たんぱく質を80%以上除去できることがわかっています。小清水町農協の等電点沈殿処理方式は日々進化しています。当面はたんぱく質の回収率を上げて、飼料として使用可能なたんぱく質の回収量を増やすことが目標です。

工業に限らず、農業や水産業に工学的手法を導入することで、これまで廃棄物と考えられていた産業廃棄物や農産加工廃棄物を貴重な資源として捉えることができます。わたしたちグループは「廃棄物は存在しない、全て大切な資源である」という考えのもと、循環型社会構築に向けた技術開発を行って参る所存です。

一言PR
本研究にはたくさんの学生が各プロセスで関わっており、彼らの果たした役割が非常に大きいということを最後に一言付け加えさせていただきます。


蓮實文彦(はすみ ふみひこ)(写真右)
沼津工業高等専門学校
物質工学科教授
副校長(教務主事)、工学博士

竹口昌之(たけぐち まさゆき)(写真左)
沼津工業高等専門学校
物質工学科准教授
工学博士

 

 

 

独立行政法人国立高等専門学校機構 沼津工業高等専門学校

http://www.numazu-ct.ac.jp/

沼津市大岡3600番地
TEL:055−926−5853 FAX:055−926−5850


 

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