静岡県環境ビジネス情報サイトエコマート静岡メニューへスキップ本文へスキップ

サイトマップ

ホーム >

ビジネス事例紹介 >ISO:2015年度版全面改訂に伴う事業者、審査員への影響について(ISO審査員 高橋祐二 氏)

ここから本文

ビジネス事例紹介 環境ビジネス成功の秘訣

ISO:2015年度版全面改訂に伴う事業者、審査員への影響について(ISO審査員 高橋祐二 氏)

ISO 14001 最新改定情報. 2015年9月15日、世界初の環境マネジメント規格であるISO 14001の国際規格(IS)が発行されました。このISO 14001:2015発行後、36ヶ月以内(2018年9月14日まで)に移行を完了(認証書を発行)する必要があります。今回は、改訂に伴う事業者や審査員への影響についてお送りします。


1.はじめに

ISO(国際標準化機構)は、1992年国際的な要望から、国連の諮問機関として発足したが、全ての規格が統一していなかったことが、その後押しを促した。当初イギリスで独自のBS規格が発生し、その後挙ってヨーロッパ各国が認証取得したのが始まりで、その後拡大を続けISO規格が、BS規格との調整を図りながら、世界的な統一規格として知名度を上げ我が国もJIS規格がISO規格との整合性を図るとともに、国際標準を取入れるようになってきた。その中で、マネジメントに関する規格もISOの中に組み込まれて行き、開発が進められてシステムとして構築されてきた。マネジメントシステムとして認証・登録することが事業者にとって、利害関係者への安心感を与え、事業者としてのスティタスにもなり、飛躍的に認証・登録件数が増えた。

マネジメントシステムとしてのISO規格は様々な分野、業種、業態、規模を問わず運用されるよう策定され、今般の全面改訂に於いては、統一マネジメントとしてのシステム化が進んだ。

2.改訂内容の概要

 今回の最大の改訂ポイントは、Annex SL(付属書 SLとも言う)の開発及び全面的な導入である。これは、セクター規格も含めた全てのマネジメントシステム規格の根幹となる上位構造の(「High Level Structure」(以下「HLS」)ハイレベルストラクチャー)ことを指しており、統一マネジメントシステムとしての開発者の意図がある。この下に個々の固有のマネジメントシステムの、要求事項が存在している。

下記にHLSの要求事項をに示す。

1. 適用範囲(Scope)
2. 引用規格(Normative references)
3. 用語及び定義(Terms and definitions)
4. 組織の状況(Context of the organization)
4.1 組織及びその状況の理解(Understanding the organization and its context)
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解(Understanding the needs and expectations of interested prties)
4.3 マネジメントシステムの範囲の決定 (Determining the scope of the management system)
4.4 XXXマネジメントシステム(XXX management system)(訳注:XXXは環境、品質マネジメントシステムを意味する。)
5. リーダーシップ(Leadership)
5.1 一般(General)
5.2 マネジメントのコミットメント(Management? commitment)
5.3 方針(Policy)
5.4 組織の役割、責任及び権限 (Organizational? roles, responsibilities and authorities) (注参照)
6. 計画(Plannig)
6.1 リスク及び機会に対応するための行動(Actions to address risks opportunities)
6.2 XXX目的及びその達成のための計画 (XXX objectives and plans to achieve them)
7. サポート(Support)
7.1 資源(Resources)
7.2 力量(Competence)
7.3 認識(Awareness)
7.4 コミュニケーション(Communication)
7.5 文書化した情報(Documented information)
7.5.1 一般(General)
7.5.2 作成及び更新(Create and update)
7.5.3 文書化した情報の管理(Control of documented information)
8. 運用(Operation)
8.1 運用計画及び運用管理(Operation planning and control)
9. パフォーマンス評価(Performance Evaluation)
9.1 監視・測定、分析及び評価(Monitoring,measurement,analysis and evaluation)
9.2 内部監査(Internal Audit)
9.3 マネジメントレビュー(Management review)
10. 改善(Improvement)
10.1 不適合及び是正処置(Nonconformity and corrective action)
10.2 継続的改善(Continual improvement)

この中で4.4及び6.2の×××には、品質又は環境等の用語が適応され、さらに固有の要求事項が各セクションに入っている。ここでは、主にISO14001にターゲットを絞って改訂変更点を記載する。

1. 戦略的な環境マネジメント
2. リーダーシップ
3. 環境保護
4. 環境パフォーマンス
5. ライフサイクル思考
6. コミュニケーション
7. 文書化

以上の7項目が、大きく変わった要求事項である。

3.改訂ISO 14001:2015の各セッションにおける変更点について

 今回の改訂の中で特に際立って、要求事項となっている1.の戦略的な環境マネジメントは第4節の「4 組織の状況」である。「4.1組織及びその状況の理解」では、「EMSの意図した成果を達成するための組織の内部・外部環境を把握すること」が要求事項とされているが、これは組織がおかれている状況を、「マクロの視点」で認識しEMSの目指す姿(課題)を明らかにする、と言った俯瞰(ふかん)した視点を持つことが求められている。

続く「4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解」では、「EMSに関連する利害関係者、そのニーズ・期待、順守義務となる事項を決定すること」が要求事項となっているが、4.1の課題の1つとして考えられるが、別建てで4.2項として新設していることは、より重要であることを意味していると言える。

 このように、組織内外のおかれている状況を把握し、EMSを経営システムと整合させどのような方向性で向かうのかを利害関係者のニーズと期待を踏まえて決定することが求められている。

従って以前のような、事務局だけで回していく事は不可能に近い。今回の改訂の狙いはビジネス

マネジメントであるため、事業経営に深く浸透させる必要がある。これは、事業環境分析を行った上で戦略を立て、個別具体的な施策を策定することである。

 事業環境分析には、「SWOT分析」、「BSC」のような手法があるが、分析方法は他にもあり不慣れな場合、複数名でブレーンストーミングを行い、組織内外の課題やニーズを付箋に書き出して、課題やニーズの整理を行う「KJ法」等を役立たせれば良い。

 尚、この「4.1」、「4.2」は、Annex SLに「必要に応じて文書化しても良い」となっているので、文書化は必須ではないが課題やニーズの分析結果を、何らかの形で文書に残すことは有用と考える。このような結果を踏まえて、組織の著しい環境側面を特定しなければならない。

今般新たに新設された「6.1のリスク及び機会への取組み」も、基本的な原則としては環境保護に視点を置いた取組みが必要とされるが、環境、社会及び経済のバランスが重要であり、「4.1項の外部及び内部の課題、4.2項の利害関係者のニーズと期待」を考慮して、リスク及び機会を決定しなければならない。

リスクには、為替リスク、規制リスク、風評リスク、災害リスク等様々なリスクの存在が有、環境面でも、エネルギーコスト、原材料、・資材コスト、環境技術調達コスト等予想に反して発生する追加的な費用が環境経営に影響を及ぼすことが考えられる。

例えば為替リスクを例に挙げれば、円安ならば一般的に輸入企業にとっては脅威であり、輸出企業にとっては機会となるまた、円高ならばその逆となる。このようなリスクを特定し、対策を考慮することが規格要求事項となっている。

環境取組みと関連するリスクの事例としては、次の表に示す。

環境経営の脅威及び機会に関連するリスクと対策

リスクの例

想定される脅威と機会

対策例

規制リスク

・規制対応に伴う費用負担
・施設・設備の更改の必要性
・規制対応の製品・サービスへのニーズ発生

規制情報の迅速な把握、先行した対策の実施

風評リスク

・企業イメージのアップ・ダウン

積極的な情報発信による適切な事実情報の普及、NPO等との連携による透明性確保

人事リスク

・人口減・高齢化による人員不足、環境対応
・ノウハウの損失
・環境経営の発信によるイメージ向上に伴う
就業希望者の増加、モチベーション向上

ブランド戦略における環境経営の取入れ、環境人材育成せいどの導入

競合リスク

・他社新製品による自社品の陳腐化
・他社品との差別化・優位性の確保

環境マーケティング、環境配慮設計による差別化推進

カントリー

リスク

・現地の資源不足(水、電力、燃料等)
・廃棄物管理の困難さ
・不足物への対応によるビジネスチャンス

資源管理の徹底・開発、環境対応ノウハウのサービス化、

以上のように、数え上げればきりがないほど企業を取り巻く環境下では、リスクは無限に存在する。但し、全てのリスクについて、対策は不可能であるため「4.1及び4.2」を考慮し組織に見合ったリスクを特定して、戦略的、戦術的な観点から抽出すれば良い。

リスク管理策としては、大きく4つの分類に分けられる。「許容」・「防止」・「低減」・「回避」の視点でとらえると、リスクを受け入れる「許容」と言う選択肢もありうる。「6.1.4」のリスクの防止や低減など「取り組む必要がある」リスクに関して文書化したりする必要が生じる。

従ってリスクの決定方法には、非常に単純な定性的プロセス又は完全な定量的評価を含め、リスク特定の方法や精度は、組織の実態に見合っていれば良い。

続く、2.リーダーシップについてだが、今般の改訂のハイライトの一つに挙げられている。これは、第五節「5 リーダーシップ」の中の「5.1 リーダーシップ及びコミットメント」の新設により、トップマネジメントの直接的関与をより明確に、要求事項として表記している。言い換えれば、トップマネジメントには、主要なEMS活動について、単にそれらの活動が行われるよう支援するだけではなく、自らが従事していることを実証しなければならないことを要求している。つまり、トップマネジメントは、自らのEMSの運用に積極的に関与し、その結果に対して説明責任(accountable)を持つ必要がある事を意味していて、「管理責任者」の役割と言う言及が全て削除され、EMSが別のシステムとして運用するのではなく、戦略的レベル及び業務レベルの事業活動の中に織り込まなければならないと言う要求事項が、明確に強化された内容であり、事務局レベルで回すことが出来なくなってきていて、より一層の実務的運用が求められる。但し、Annex SLでは全てを自らが実施しなくても良いとの説明が有、従来通り環境管理責任者を設置するかどうかは、組織が決めればよいが、権限、役割、責任の委譲は、従来の物とは異なり、CEO(最高執行責任者)レベルの質でなければならなくなった。

次の3.環境保護についてだが、序文にも記載されているEMS固有のものである。組織に対する期待とニーズは環境、社会及び経済のバランスを実現することが、今日の課題の1つとして上げられ、到達点としての持続可能な開発は、持続可能性のこの“三本柱のバランス”をとることにより達成される。従って害及び劣化から環境を保護するために事前対応的(proactive)なイニシアティブにコミットすることまで拡大している。

 このように、環境保護としては定義はされていないが、組織に対する期待は汚染の予防、持続可能な資源の利用、気候変動の緩和及び気候変動への適応、生物多様性及び生態系の保護等を含みえなければならない。

 続く4.環境パフォーマンスについてだが、今回の改訂によりより一層の環境パフォーマンス向上を求められている。従って継続的改善に於いても環境パフォーマンスの改善に重点が置かれた。「1.適応範囲」、「4.4 環境マネジメントシステム」、「5.2 環境方針」、「7.2 力量」等至る所で、環境パフォーマンスの向上又は環境パフォーマンスへの影響についての記載がされ、効果的且つ効率的な環境パフォーマンスの向上を図らなければならなくなり、「7.2.a」」の力量についても環境パフォーマンスに影響が及ぶ可能性がある及び順守義務を満たす組織の能力に影響を与える業務を組織の管理下で行う人(又は人々)に必要な力量を決定することを要求していて、環境パフォーマンスの向上に繋げるためには、それ相応の力量の確保が必要不可欠となっている。力量決定には、定期的な力量講習及びその後の力量試験等が、有用手段の1つと言えるが、組織全体の組織で働く人々の力量の見える化が必要と考える。また、力量確保の手段としては、外部ではeco検定の推進、コンサルティング等が有用で、内部では自主保全活動等も有用な手段の1つと考えられる。いずれにせよ、適材適所を図る基準及び評価基準が必然的に発生する。

 次の5.のライフサイクル思考だが、調達された物品及びサービスに関連する環境側面の管理に関する2004年度版の要求事項に加えて、組織は、組織が管理する及び影響を及ぼす範囲を、製品の使用及び使用後の処理又は廃棄に関連する環境影響にまで拡張する必要が発生した。但しライフサイクル評価までは要求されていない。但し考え方としては、バリューチェーン全体でとらえることが有用である。

序文の0.2の環境マネジメントシステムの狙いにも記載されているが、環境影響が意図せずにライフサイクル内の他の部分に移行するのを防ぐ事が出来るような、ライフサイクルの視点を用いることによって、組織の製品及びサービスの設計、製造、流通、消費及び廃棄の方法を管理するか、又はこの方法に影響を及ぼす。例えば自社内の環境負荷が大きいため他のプロセスへのアウトソースへ移動したとしても、ライフサイクルの視点では、環境負荷に影響はなく、逆に移動に要する環境負荷が増えてしまう。従来の自社だけで環境負荷をとらえて行うような手段は通用しない。

続く6.コミュニケーションについてだが今般の改訂により、内部及び外部とも要求事項としては、双方に同等な比重が追加され、矛盾が無く一貫した、信頼のおける情報についてのコミュニケーションに関する要求事項及び組織の管理下で働く人々が環境マネジメントシステムの改善提案を行う仕組みを確立することに関する要求事項が含まれている。

 今回の要求事項ではコミュニケーションにおけるプロセスの計画及び作成される情報に信頼性が求められている。また、これらの結果は文書化した情報として保持(記録)しなければならない。コミュニケーションについては、内部と外部に分類されるが次に、内部と外部のコミュニケーションを必要とする要求事項を記す。

a)内部コミュニケーションを必要とする要求事項

 「5.2 環境方針」「5.3 組織の八鍬に、責任及び権限」「6.1.2 著しい環境側面」「6.1.3 順守義務」「6.2.1 環境目的」「8.2 緊急事態の準備及び対応」「9.3 マネジメントレビュー」「10.1 不適合及び是正処置」

b)外部コミュニケーションを必要とする要求事項

 「5.2 環境方針(利害関係者が入手可能であること)」「6.1.3 順守義務(利害関係者からの要求事項の入手)」「7.2 力量(環境パフォーマンス及び順守義務に影響する外部の人々)」「7.3 認識(組織の管理下で働く人々)」「8.2 緊急事態への準備及び対応(関連する外部の組織、人々)」「9.2 内部監査(外部の監査−2者監査等の時)」 「9.3 マネジメントレビュー」「10.1 不適合及び是正処置」「9.1 環境パフォーマンス評価」

特に留意しなければいけない要求事項としては「7.3 認識」である。従来のような環境方針カード等を持たせたり、掲示による伝達ではなく、環境方針及び順守義務等組織の管理下で働く人々全員が同じ認識を持ち、環境方針の内容をよく理解し、自分の業務に関してどのような環境影響があるのか、また、環境パフォーマンスの向上によりどのような便益を得られるのか或は、そのための貢献はどのように行えばよいのか、さらに順守義務を怠った場合要求事項に不適合であることの意味を理解していることが要求されている。これはより深くマネジメントシステムを浸透させるため及びビジネスに直結している考え方が、導入されているためである。この認識はトップマネジメントから組織の管理下で働く人々全てに該当する。

特に外部コミュニケーションについては、CSR、コーポレートガバナンスの考え方が導入されGRIによる透明性、健全性を明らかにすることが明確化している。

最後に7.文書化については、今般の改訂では「7.5 文書化した情報」となっている。大きな特徴としては、従来のような詳細な区分けがされてなく、要求もほとんどない。例えば各種手順書類などは、文書化した情報となり、文書化した情報を保持と言う文言が入って入れば記録として、認識して頂きたい。また、文書化した情報は組織の管理下で働く全ての人々に、認識させるために、言語は多種多様でなければならない。管理方法は従来の方法と同じである。

参考として次に、改訂ISO 14001:2015年度版の概念図を下記に示す。

次ページに、ISO14001:2015とISO14001:2004との対比表を示す

最後に、今般の改訂では規格構造のHLSの導入と、いくつかの新規要求事項が追加されている。組織内外の課題の特定、脅威と機会のリスクの特定と言った、経営戦略と環境マネジメントの連携・融合を意図した改訂箇所や、コミュニケーション計画、グリーン調達といった、現代の環境経営の実態に規格要求事項を合わせた改訂になっていて、自社のEMSの運用について戦略的、戦術的な環境経営の推進、と言う実効性をより高めた改訂内容であることから、組織内外の分析等着手できるところから準備を進めていき、ISO 14001:2015年度版への移行をスムーズに行っていく事が望ましいと考える。


 

前に戻る